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2025.6.10

あるスキャンダルの覚え書き

あるスキャンダルの覚え書き

ゾーイ・ヘラーのベストセラー「あるスキャンダルについての覚え書き」がもとになっているが、未成年の生徒と関係した実際の事件がモデルにもなっている。

第79回アカデミー賞で主演女優賞、助演女優賞、脚色賞、作曲賞にノミネート。ほか、映画賞でもノミネート多数。

あるスキャンダルの覚え書きの映画情報

原題 Notes on a Scandal
制作年 2005年 制作国 イギリス
上映時間 98分 ジャンル ドラマ
映倫 R15+
オフィシャルWeb https://www.20thcenturystudios.jp/movies/notes-on-a-scandal
監督 リチャード・エアー
キャスト

ジュディ・デンチ
ケイト・ブランシェット
ビル・ナイ

あるスキャンダルの覚え書きのネタバレを含む場合があります

以下「あるスキャンダルの覚え書き」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
あるスキャンダルの覚え書き」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。

あるスキャンダルの覚え書きのあらすじ・ストーリー

ロンドン郊外にあるセント・ジョージ総合中等学校。ここで歴史を教えるベテラン教師のバーバラは、厳格すぎるゆえに生徒ばかりか同僚教師たちからも疎まれる孤独な存在だった。そんなある日、美貌の美術教師シーバが赴任してくる。彼女との間にならば友情が築けると確信したバーバラは、以来シーバを秘かに観察し、それを日記に書き留めていく。そして、ある出来事をきっかけにシーバと親しくなったバーバラは、上流階級の幸せそうな家庭生活にシニカルな感情を抱きながらもシーバとの友情に喜びを感じていた。ところがある時バーバラは、シーバと男子生徒の情事の現場を目撃してしまう・・・。

引用元https://www.20thcenturystudios.jp/movies/notes-on-a-scandal

あるスキャンダルの覚え書きをみた記録

65歳前後の独身女性、独り暮らしが長く、男性経験なし、猫を飼い、喫煙者、週末はコインランドリー。親友を見つけると恋人のように執拗に距離を縮めてくる定年間近の中学校教師のバーバラ。
一方、美術教師として新任したシーバは、夫と子二人の4人暮らし。気軽に誘ったランチから、シーバとバーバラの距離が縮まっていくが――。


ミステリー映画と紹介してあったけど、同性愛でもなければ殺人するわけでもなく、つまりイカれたこわい女性の話がミステリー部分のわけですが。怪奇な話だろうか、角度を変えれば純粋のようにもみえる。女性が性的対象だといっているわけではないけど、少年との別れに落ち込んでいるシーバをなぐさめるスキンシップのシーンは性的な思惑を感じたし、時にバスで男性と手と手が触れ合ったときに性的な興奮をおぼえるとも語っていた。同性愛だとかバイセクシャルだとか、そういう概念は関係なく絶対的な存在がほしいという、たしかにこわいといえばこわい?のかもしれないが、これまで純粋にまっすぐまじめに相対してきた不器用なひとという印象。

だって教師を定年するくらいの年齢、いつも独り、家族ではない絶対的な存在がほしいとおもうのは自然なことじゃないか。日記に綴った彼女の内心は支配的だったけど、その奥にはなにをするにも、どこにいくにもいつもいっしょだった子どものころの親友を探しているような無垢な願いが込められているようなかんじ。なんとな〜く気もちはわからなくもない。支配したいなんてことは考えたこともないが、友だちと呼べるひとは数人のあたしからすると、子どものころの親友みたいな存在がほしいのはとてもわかる。歳を重ねて、たくさん失敗もしてきて、外に本音を漏らさず生きてきたからだいぶひねくれてしまったみたいだけど、芯には純情を感じた。苦手な人を遠ざけるタイプで、それもたいがいの人間を苦手に分類しがちなのであたしは。

なにより、親友に求めるものがあふれた結果フラれたてしまうバーバラよりも、夫と子がいながら15歳の少年と関係したシーバのほうがはるかに罪は重い。この映画でミステリーの対象はバーバラのようだけど、きっと懲戒だろうし、実刑を受けたのちも家族共々、ふつうの生活をすることはしばらく難しくなるシーバが、バーバラの日記を見ておまえはイカれてると怒ったがどう考えてもシーバのほうがイカれている。「私はここよ!」はさっぱり理解ができなかったし、夫が「成り行きは人が起こすんだ!だれだって若い子に目移りする、だけど理性でおさえている」とシーバに怒りをぶつけてた。成り行きは人が起こすんですよ、理由があって事を起こしてるんですよ、罪なんですよ

まして、未成年と関係した事件がもとになっているくらいなので、バーバラの執拗な友情がこわい、と描かれているのは気になる。実際に起きた事件では、のちに結婚し、さらに離婚しているとのこと。その後、教師は2020年に亡くなっているそう。


ケイト・ブランシェットは今回とてもクズでしたが、彼女は存在がアートと感じるくらい美しいですね。ストーリーなんてどうでもいいくらい、彼女を見たいがためだけに映画を流しているといってもいいくらい。劇中でもバーバラが表現していたくらい彼女は美術。それもあってか、性的なにおいをあまり感じない。「キャロル」(2015)でもそうだったけど彼女の横には女性がしっくりくる。

大女優ジュディー・デンチもナレーション含め、とってもコク深かった。日記を読まれたことに気づいたシーンが特にすき、スッとしちゃって。