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2023.2.6

ラヂオの時間

ラヂオの時間

1993年に上映された三谷幸喜主宰の劇団東京サンシャインボーイズの演劇が三谷幸喜の初監督作品として映画化。Wikipediaによると、三谷が初めて手がけたフジテレビの連続ドラマ『振り返れば奴がいる』の脚本が、三谷の意図に反して制作スタッフにシリアス調へ書き直されて放送された経験から生まれた作品なのだそう。

主要キャスト以外のちょびっと出演でも豪華な顔ぶれなので見逃さないように〜!

ラヂオの時間の映画情報

原題
制作年 1997年 制作国 日本
上映時間 103分 ジャンル コメディ
映倫 G
監督 三谷幸喜
キャスト

唐沢寿明
鈴木京香
西村雅彦
井上順
戸田恵子
梶原善
並樹史朗
奥貫薫
小野武彦
藤村俊二
布施明
近藤芳正
モロ師岡
田口浩正
梅野泰靖
細川俊之
渡辺謙
桃井かおり
市川染五郎
佐藤B作
宮本信子

ラヂオの時間のネタバレを含む場合があります

以下「ラヂオの時間」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
ラヂオの時間」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。

ラヂオの時間のあらすじ・ストーリー

生放送のラジオドラマを控え、緊張気味のスタジオ。初めて書いた脚本が採用された主婦のみやこも、直前のリハーサルを見学していた。そんな中、突然主演の人気女優が設定を変えたいと文句を言い始める。困り果てたプロデューサーは、みやこに脚本の書き直しを依頼。だが他の出演者も口々に不満を漏らしはじめ、メロドラマだった物語は次第にアクションへと変貌してゆく。

引用元https://fod.fujitv.co.jp/title/6302/

ラヂオの時間の予告動画または関連動画

ラヂオの時間をみた記録

ラジオ局のラジオ弁天で生放送されるラジオドラマ「運命の女」のスタジオは本番前のリハーサルは順調に進んでいた。ドラマの脚本は主婦みやこによるはじめての作品だったが、個性あふれる大御所役者をそろえ、数十分後の本番を控えていた。和やかに進みそうだった現場が一変、わがまま女優千本のっこが脚本に文句をつけはじめる。役名が変わり、職業が変わり、と次々に出る要望に脚本も変更を余儀なくされるが、はじめての現場であるみやこが臨機応変に脚本を合わせられるわけもなく、なんとかするためにプロデューサーうしじまは近くのスタジオにいたベテラン放送作家にヘルプの声をかけた。彼の手によって当初の予定から多々変更が入り、みやこも予想外の展開に戸惑ったが本番直前ということで首を縦にふるしかなかった。

いよいよ本番がはじまったが、脚本が変わったために用意しなければならないSE素材がなく、かつて効果音を作っていた警備員を無理やり引っ張り出したり、千本のっこのわがままをおもしろく思わないほかの役者までもがじぶんの役を勝手に変えはじめたりと、現場は荒れに荒れだした。スポンサーと千本のっこの機嫌をとる編成、どうにか番組を成立させたいプロデューサー、どんどん変わる脚本に合わせて走り回るディレクター、じぶんのやりたい役を主張する役者、脚本が次々に変わり振り回される作家、平凡な感動物語が宇宙まで舞台を移し大スペクタクル化していくなかで、生放送のドラマは無事に終えることができるのか——。


世界に誇る日本のコメディ映画はこれなんじゃないかと思っているあたしにとっての名作です。業界にいないと知る由もないラジオ局のスタジオの裏側。リアリティーがあるのかないのか想像もつかないのだけど、この映画の役者たちはものすごくリアリティーがある。ことばが自然だし、一般的な人間と人間の会話の間が自然だし、役者が下手に芝居をしているのもあって生々しい。複数人で仕事をしているとき、慌てているとき急いでいるとき、無理してこなそうとしているとき、だれかが話すことばを順番待ちなんてしないし、間を与えることもしない。めんどうくさかったり、怒りをおさえたり、つくり笑いをしたり、さまざまの個性的な感情の起伏を各々が表に出すか出さないかの瀬戸際で芝居しているような感じで、ホンモノのベテラン役者たちが絶妙なバランスで表現している。役者役をする役者たちの見事な力量がうかがえる。

制作スタッフ側のさまざまな表情もおもしろくて、局と役者たちの狭間で調整に調整を重ねて、ちょうどいいところを見つけていく展開はこちらまでストレスをもらうかのような。俯瞰してみたら子どもたちのままごとで幼稚なのだけど、オトナたちがその場しのぎで奮闘する社会の縮図でもあったりして実はオトナの社会も子どもの社会も変わらないんじゃないかと思わせる小さな世界。やる気のある人間はほんの一部で、あとはプライドのためかヒマつぶしか、という人間たちが集まり、なんの意味があるかよくわからないような仕事。でも誰かは聴いている。さらには感動すらしている。誰かしらの心を打つ仕事をしているという自覚が一切ない人間たちがする仕事ですら誰かの心を動かしちゃう皮肉めいたところもおもしろい。

テンポがよくて次々に起こる問題を強引にその場しのぎで解決に導く、みんなの“どうでもいいがやっておこう感”だけで進む展開が最後まで飽きることなく、最後どうなるのかを知らずには終われない、という秀逸コメディ。この映画もなんか元気が出てくる映画のひとつだと思います。

エンディングに流れる布施明の「no problem」は当時よくハミングしたくらいすきな歌で、布施明が映画のなかの堀之内修司として歌っている。布施明のいい声と皮肉まじりの歌詞がいいのだよ〜。編成の堀之内修司のキャラクターも最高で、ムカつくけどだいすき!YouTubeで見つけたので貼っておくよ。
まさか「ラヂオの時間」がプライムビデオの配信でみられるとは、便利な時代になったよね。ただし期間限定でしょうから視聴はおはやめに。

ところで、何人か亡くなっている役者もいて、千本のっこのわがままに対してわがままで抵抗し続けた浜村錠役の細川俊之、昔に音響をしていた警備員役のおヒョイさんこと藤村俊二、千本のっこのマネージャー役の梅野泰靖。特に梅野泰靖が演じる古川マネージャーがちょくちょく場をかき乱し、プロデューサーの怒りに触れるシーンがおもしろくって。何か問題が起こるたびに「俺もそうおもってたんだよ〜」と後出しで空気をかき乱す古川マネージャーは、わがまま気ままの役者たちよりもイラ立ちそうな、秀逸な老害っぷりでした。業界にはこんなひとたくさんいそう、と思わせる最高のキャラクターでお気に入りです。

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