アイランド

アイランドをみた記録

2005年公開当時、2019年にクローン人間が映画の中の正解のように生きている科学が発達しているとは思っていなかったし、ずいぶん近い未来で描いたなと驚く。ま、時代云々は特に関係がなくて、重要なのはクローンとは人間か、人間でないとしても生命としての尊厳を与えるべきか、倫理を問う重いテーマ。

あるあるだけれど、邪まな心や考えを持たないこの世に誕生したばかりのクローンはやさしい。だから対人間（オリジナルの）となると、どうしても人間が悪になりクローンが善に見られがちだ。重いテーマのなかに、こういう贔屓目を完成させる大前提があるので善悪が偏る。

この映画のなかでは、誰が善で誰が悪か。遺伝子組換における法を犯しながらクローンを作りリッチな人たちを相手に商売をするドクター・メリックか、生きるために本来の持つ命の限界を不自然な形で越えようとするスポンサーか、オリジナルのコピーでありながらオリジナルと同様に生きようとするクローンか、もしくはそんな社会を作ろうとする国防総省か。

悪そうなのはドクター・メリックのように思うけど、彼の根本にあるのは小児白血病を治そうとする医師の志。人間を助けるための科学の成功が彼の志だ。それは悪か問われれば、きっと善だと思う人が大半だろう。

では自分の命をもっと長いものにしようと大金をはたいて、アグネイトの命を買うスポンサーが悪か。それもまた悪だとも思えない。どんな理由があるにせよ、生きたいと思うのは自然なことだし、金で臓器や細胞が買えるとなれば、買える資金があるならば、やらない人間は少ないはずだ。

では勝手に生を受け、生かされ、殺される何の権利も持たないクローンが悪か。「勝手に生を受け、生かされ殺され」と聞くと、当然悪ではないが善でもないはずだ。感情を持ち、魂があり、意思がある生命体であっても、この時点ではただのアグネイトだと思われるのは仕方がない。言葉を話すから人権を与えられるのか、感情があるから人権を与えられるのか、それならあたしたちのすぐ隣にいるペットたちだって同じことだ。見た目が違うだけで何も変わらない。
リンカーンやジョーダンが自分の命を守ろうと街中を巻き込み、他人を巻き込み、人を殺すそれは許されるのか。神に好かれている、と言われたシーンやスポンサーであるトム・リンカーンをクローンだと思わせて殺させるシーンはどうも納得がいかなかった。

クローンの世界の『アダムとイヴ』のように描かれていたけれど、彼らはまだ世界や社会を知らない無垢な赤ちゃんのようなもので、人間とは明らかな別物であり、さらに自分たちを正当化して人間を陥れる悪なのではないかと思う。

よくあるSF映画の、AIがひとりでに動き世界を支配しようとする〜、にものすごく近いのではないかと感じた。人間が作ったクローンがひとりでに動き、意思をもち、人間を悪として世界を支配してしまう危険性があるのではないか、とあたしの結論であ〜る。
ユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソンがクローンなら、自然とこの二人が善に見えてくるだろうけれど、クローンに善悪を判断されるようになる世界なんてぜったいイヤだよ。