2024.10.20

その男、凶暴につき
北野武初監督作品。外国向けのタイトルは「Violent Cop」。
その男、凶暴につきの映画情報
原題 | |||
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制作年 | 1989年 | 制作国 | 日本 |
上映時間 | 103分 | ジャンル | クライムサスペンス |
映倫 | - | ||
オフィシャルWeb | https://www.shochiku.co.jp/cinema/database/04283/ |
監督 | 北野武 |
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キャスト | ビートたけし |

以下「その男、凶暴につき」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「その男、凶暴につき」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
その男、凶暴につきのあらすじ・ストーリー
一匹狼の刑事・我妻諒介(ビートたけし)は凶暴なるがゆえに署内から異端視されていた。ある晩、浮浪者を襲った少年の自宅へ押し入り、殴る蹴るの暴行を加えて無理矢理自白させた。暴力には暴力で対抗するのが彼のやり方だった。麻薬売人の柄本(遠藤憲一)が惨殺された事件を追ううちに、青年実業家・仁藤(岸部一徳)と殺し屋・清弘(白竜)の存在にたどり着いたが、麻薬を横流ししていたのは、諒介の親友で防犯課係長の岩城(平泉成)だった。
その男、凶暴につきをみた記録
理解がおいつかないところも少々あるが、ハッピーエンドではないことを確信しながら、どう破滅していくのかを見守った。なにせ余白が多くてアーティスティック。ときにフランス映画かとおもうくらい、余白をたっぷり使って世界観を演出していたようにおもう。
映画は一秒たりとも無駄なことはないはずだが、この映画はわざと無駄をつくっているように感じた。つまり余白がとても多いイメージ。我妻刑事と岩城刑事が階段をのぼる姿があんなに長い時間必要とはおもえないし、一万円貸してくれがどこにもつながっていないようにおもったし、急いで現場に向かう途中に飛び出してきた自転車はなくたって成立していただろうし。これだけじゃないけど、だからといってクエンティン・タランティーノのような何の意味もない無駄話をさせているのとは違って、あくまでも物語の余白という印象。ふと一瞬、物語とは関係のないところで情報が増えたり、立ち止まらせたり、こちらを映画のなかの世界に入り込ませるような効果がありそうだ。
さらに全体的にセリフも少ない。我妻もそうだし、清弘たちだって多くを語らない。みていれば流れはだいたい掴めるが、こちらがある程度ちゃんとのみこまないと、セリフがない分唐突に展開する。昔の映画はよくあることだけど。セリフが少ないとグッと重みも増すので、さらに雰囲気がよくなるんだろう。クライマックスでも特別なセリフもBGMもなく、皮肉ばかりの世の中を無機質に演出していた。
麻薬の密売だの殺人だな汚職だの、どこにでも悪はあふれているし、成敗してもなくなることはない、というかなしいメッセージを受けとってみおえた。
ビートたけしは芝居をしている感じがしなくて、いつものぎこちない照れ屋のほうのビートたけしだった。後ろには大きな闇をかかているような、どこか悲しげで意味深なキャラクターは、芝居がへたっぴでも自然とコクが出ていた。ただただ漏れ出る色気が、またさらに狂気さを増させているような、ね。
個人的にMVPは白竜かな。この頃からあの目つきと、これまた色気が漏れていましたな。