2018.3.9
マッチポイント
ウディ・アレンが出ていないウディ・アレン監督の映画。お気に入りのスカーレット・ヨハンソンもでてたね。
なんともウディ・アレンがイイネ!って言いそうな話。ストレートではない、ひねくれ者が好みそうな話だ。
マッチポイントの映画情報
原題 | MATCH POINT | ||
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制作年 | 2005年 | 制作国 | イギリス、アメリカ、ルクセンブルク |
上映時間 | 124分 | ジャンル | サスペンス |
映倫 | PG12 |
監督 | ウディ・アレン |
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キャスト | ジョナサン・リス・マイヤーズ |
以下「マッチポイント」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「マッチポイント」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
マッチポイントのあらすじ・ストーリー
場所はロンドン。テニスコーチの仕事をはじめたクリス(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、テニスの生徒で富豪の父を持つトムと仲良くなる。そのうちトムの妹クロエに気に入られ恋人になった。
あるとき、トムの婚約者でセクシーなノラと知り合い、クリスはノラに惚れ浮気の関係になるも、トムとノラが婚約解消しノラは姿を消してしまう。クリスはクロエと結婚したが、約一年ぶりにノラと再会し、ふたりの関係が再熱!
マッチポイントをみた記録
このあらすじを読むと、ビックリするくらいつまんないよね。よくある話。聞き飽きた話。末路はいくつか想像つく話。度肝を抜かれることはないって予想つく話。この手の映画なんて腐るほどある。
だけど、そんな平凡な話(現実的にはぜんぜん平凡じゃないのだけど)にシャシャッとスパイスが入ってるんだ。そのスパイスとは、ウディ・アレン監督的には”運”なわけだ。人生は運が大きく左右するって冒頭のフリからはじまり、さいごに運でカタをつける。
おもしろいと言えばそうなんだけど、”運”だけをとったら、良運を感じていないあたしにとっては、なんだかやり切れなくなるような話で、気持ちはモヤモヤする。
ある程度の大人なら、これから先に一発逆転が待ってる可能性は高くないことを心得てくる。諦めにも近いかもしれないけど、多少なりとも現実を受け入れて、理想を少しずつ捨てていったりする。
子どもは希望しかないから夢を大いに抱くべきだけど、やっぱり大人になると世の中うまくいかないことを痛感して、先行きを安全なリスクの低いほうへ持っていきがち。運の関係ない生活に落ち着きたくなるってこと。もちろん運が良くなることは心底願っているけど、無理でしょう、が大前提。
運はいい人間に味方するって言葉も聞いたことあるし、たぶん信じているひとも多いとおもう。でもやっぱり運を掴むひとは多くない。
その運をなにに対して良運とするかは人それぞれだけど、この映画では途中まで裕福な生活が良運としているから、お金持ちは一般的でないし、つまり良運を掴んだひとは少ないってことになる。(実力で掴んだ富を運と言われると腹立つひともいるだろうけどね。)
運だなんだと言ってるんだけど、この映画は、ひとはみんな平等と見せかけて運が関係してるんだよって言っているわけではないとおもった。
あたしの場合、主人公のクリスは運が良かった、という解釈はできなかったから。
クリスの人生は、ほんのすこしの差で負けたと解釈してる。富を得た勝ちは運がよかったけど、負けを背負った不運もあった。あの終わり方からすると、不運の方が大きいんだろう。死ぬまで背負う不運を掴んでしまったことを皮肉っているとしかおもえない。
しかも、それは指輪云々よりもっと前からはじまっていて、ノラに出会ったことかもしれないし、クロエと結婚したことかもしれないし、トムのコーチになったことが不運だったのかもしれない。
指輪のところはクリスの断罪にはなったけど、クリスが死ぬまで背負う負い目は、彼の人生における不運になるはず。
富を得てもこの男の人生は不運だ、と言いたいとしかおもえなかった。
こんなクソ野郎なのに罪を咎められることなく、金持ちで家族もいてしあわせに暮らすのかよっておもうかもしれないけど、あたしにはこうは取れなかった。
あたしがもし、クリスだったらぜったい不運だとおもうから。後悔しかない人生になるもん。富じゃない、もっと道徳の話をしてるんだと認識してる。
「この映画を見ている不運と思っているおまえよ、どうだこんなバカな男の話。イヤだろう?こんな人生」って言われてるような気がした。
運がいいタイプの人間じゃないあたしは、クリスの良運にモヤモヤする。だけど、彼には悪運もちゃんとくっついてきていて、相殺されるわけではなく悪運が大差で勝っているとおもってる。
後味が悪いとおもうひともいるかもしれないけど、薬まみれの良運な英雄刑事のストーリー「バッド・ルーテナント」(2009)よりぜんぜん現実的でいい。
もうひとつ。この映画でも女の嫉妬は醜く描かれてるね。今回、クリスとノラの不倫関係において悪はクリスになったけど、ノラの行いもすこぶる悪い。
そもそもノラみたいな自信ある女性が、クリスみたいな男をすきになったのも謎だけど。
もしかしたら、男性視点(妻帯者側)からするとノラが身をわきまえてワーキャー騒がなかったら事なきを得たんじゃないのとおもうひともいるかもしれない。
妊娠の件はちょっと困る話だろうけど、あたしに言わせれば、不倫している身でワーキャー騒ぐのはダサい。略奪したいのは承知だけど、ワーキャー騒いで男がじぶんにさらに惚れ込むことは決してないわけで、すぐ男を虜にしてしまう系のノラならそんなこと知ってるはず。女としては、かなり男目線の映画だなとかんじる。
少しでも頭使うなら、金もあるし、妻と離婚するなんて言う男は金もらって別れるか、金もらいながら大人しく不倫関係を続けるべきだ。
それは愛のない話ではなくて、もちろん愛がある前提で。あたしならまちがいなくそうする。愛した男にワーキャー言って逆方向向かれるのはぜったいイヤだし、離れる選択を考えさせることはぜったいイヤ。
あたしならクリスみたいなあんな男まちがいなくすきにならないけどね。すきじゃない女と結婚できる男なんて気持ちわるすぎる。
マシュー・グッド
なにこのかわいい顔!キラキラしていてまぶしすぎる。モテモテ間違いなしの彼だけど、ヒットには恵まれていないようで。せっかくあまいマスクなんだしいい作品と出会えてほしいね。