2019.7.7
クロエ
ファニー・アルダン、エマニュエル・ベアール、ジェラール・ドパルデューのフランス映画「恍惚」(2003)をリメイク。
いわゆるエロティックサスペンスだけど、ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライドというベテラン役者がキャスティング。
クロエの映画情報
原題 | Chloe | ||
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制作年 | 2009年 | 制作国 | アメリカ・カナダ・フランス |
上映時間 | 96分 | ジャンル | サスペンスドラマ |
映倫 | R15+ | ||
オフィシャルWeb | http://www.sonyclassics.com/chloe/ |
監督 | アトム・エゴヤン |
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キャスト | ジュリアン・ムーア |
以下「クロエ」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「クロエ」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
クロエのあらすじ・ストーリー
キャサリン(ジュリアン・ムーア)は産婦人科医として成功し、仕事と家庭を両立した手本的女性。教授の夫デヴィッド(リーアム・ニーソン)と優秀な息子マイケル(マックス・シエリオット)と三人家族で豪邸で暮らしていた。
キャサリンはある日から、デヴィッドが浮気しているのではないかと疑いはじめ、偶然見かけた美しく若い娼婦クロエ(アマンダ・セイフライド)と知り合い、夫を誘惑してほしいと依頼する。
後日クロエは実際にデヴィッドと知り合い、デートやキスをしたことをキャサリンに報告した。キャサリンは、浮気なんて考えられなかった夫が女性に誘われてどんな対応をするのかを知りたかっただけだった。一度はバカげていると思ったが、デヴィッドが本気でクロエを求めはじめた様子を報告されると、さらにデヴィッドの行動を知りたくなり、クロエに継続するよう依頼した。
しかし、どんどんエスカレートしていくデヴィッドとクロエの関係に不安をおぼえ、もうデヴィッドとは会わないでほしい、契約は終了とクロエに伝える。が、それでも二人の関係は終わってくれなかった。
同時に、クロエはキャサリンを誘うようになり、キャサリンもクロエが気になっていった。とある日、クロエとデヴィッドがとうとう肉体関係を持ったと知らされたキャサリンは、悲しさと怒りと複雑な感情でクロエと肉体関係を持ってしまう。
キャサリンが遅く帰宅すると、デヴィッドがキャサリンに浮気を疑っていた。キャサリンとデヴィッドの信頼関係はボロボロ、口論を聞くマイケルもウンザリして家族関係は決裂寸前だった。
そうしてキャサリンはクロエに縁を切りたいことを伝えると、クロエは応じてくれなかった。そのため、キャサリンは覚悟を決めて、デヴィッドとクロエを同じ店に呼び出して話し合おうとする。しかし、仕事の合間に呼び出されたデヴィッドとキャサリンがいるところにクロエが現れたが、デヴィッドはクロエを知らない様子だった。キャサリンは、クロエの嘘だったことに気づいた。デヴィッドに事の経緯を告白し、ふたりは昔のように仲を取り戻した。
デヴィッドは仕事に戻りキャサリンは帰宅したが、キャサリンが自分の部屋へ入ると、そこにはクロエとマイケルがベッドで寝ていた。クロエはキャサリンに縁を切ろうと持ちかけられたことを恨み、マイケルに近づいた。キャサリンとクロエは口論になり、キャサリンがクロエをなだめるようにキスをすると部屋の外に出ていたマイケルがその様子を見てしまう。それに気づいたキャサリンはクロエから離れたが、クロエはそのまま窓から落下し死んでしまう。
ラスト、自宅では家族三人が和やかにゲストを招いてパーティーを開いていた。パーティーを楽しむキャサリンの髪には、クロエが大事にしていた髪飾りが付いていた。
クロエをみた記録
成功した産婦人科医キャサリン、夫は教授で息子は優秀。立派でオシャレな邸宅で暮らしているのに、なぜ幸せそうではないのか。お金があっても、夫婦仲良し、家族仲良しでなければ、充実した生活とはいえないだろう。
成功したけど、気づけばもうこんな年齢。老いには逆らえないし、夫との愛も消えかかってる。息子は思春期、母親が最愛の存在だったはずだけど、今は子どもなりの恋愛事情で忙しそう。手が離れて反抗期にまで突入してまいるのに、一方夫は浮気してる様子。頭おかしくなるのは当然の話。
きっと、世の妻たちは果たしてここまで深刻に捉えてるのか。大女優ジュリアン・ムーアのキャサリンはとてつもない真っ暗闇にいるようだったけど。ま、その真っ暗闇も、それだけ夫や息子を愛している証拠だろう。愛が消えていたなら、浮気を喜んで離婚の材料にするだろうし、はたまた無関心だろう。
救いようが十分にある家庭に訪れた不幸がクロエ。訪れたというよりは招き入れた、だけどね。しかも、結果は吉で、招き入れたことで幸せを取り戻すことになる。
これだけの富裕層でも、超深刻になってしまのだから、我々一般庶民だったらさらに地獄絵図が予想できる。お金があるから娼婦を雇えるし、お金があるから最悪離れることもできそうだ。すごく現実的ではないのだけど、実際にクロエという人物は存在していた。もしかしたら、幸せな家族のなかに入ったヒビを修正するためだけの夢だったのかもしれないなんて思いそうな人のためなのか、なんなのか、クロエて人間が確かにいたことはハッキリさせていた。
エロティックサスペンスのカテゴリーのようだけど、ジュリアン・ムーアにリーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライドてこともあってまったくそのカテゴリとは思えない厚みがあった。さすがベテラン勢、エロティックサスペンスの安っぽさを余裕で立派な映画にしてくる。エロティックサスペンスのカテゴリー分けをした日本人の罪かな。
だけど、いまいち腑に落ちないところも多い。なぜクロエがキャサリンを好きになってしまったのか、キャサリンが夫に抱かれた娼婦と寝たいと思う心理、キャサリンに契約終了されるまえに息子マイケルを誘惑した意味、マイケルはクロエが消えたことで親子3人仲直りした風になってた経緯などなど。
ここをどう拾っていけばいいのだろう──と最後にスッキリさせてくれることを期待していたけど解決するには至らず、ただ最後にマイケルのパーティーのオシャレに、キャサリンはクロエの髪飾りをしていたことで、すべてクロエに感謝している的な意図を汲み取ってどうにか落ち着いた。
とにかくすべてまるく収まりました、が結論。
大ベテラン役者たちの、いわゆる迫真の演技がみられるし、アマンダ・セイフライドのナイスバディも拝見できる。渋いリーアム・ニーソンハは、いつもなにかを追っていたりなにかから追われているイメージしかないから、ノーマルスピードで不思議ではあったけども、いい夫役を好演していた気がする。
おなしような夫婦間の溝や子の親離れ、浮気や不倫で悩むひとには少なからず共感できるところがあるかもしれないけど、でもいまいち中身がない映画で注意が必要かも。なにを伝えたかったんだろうと考えると、夫婦の仲が悪いと子どもはちょっと神経質でへそ曲がりや反抗しまくる系になりがちかな、逆に夫婦仲良し家族仲良しの子どもは素直で元気印のピュア系になりがちだな、くらい。