2023.8.13
ブロウ
監督のテッド・デミは「ブロウ」(2001)公開の翌年に若くして逝去。「羊たちの沈黙」(1991)のジョナサン・デミ監督の甥だそう。
ブロウの映画情報
原題 | Blow | ||
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制作年 | 2001年 | 制作国 | アメリカ |
上映時間 | ジャンル | クライムドラマ | |
映倫 | - |
監督 | テッド・デミ |
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キャスト |
以下「ブロウ」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「ブロウ」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
ブロウのあらすじ・ストーリー
ブロウをみた記録
実在した伝説のドラッグディーラーだったジョージ・ユングの半生を映画化。父は暖房機器の会社を経営していたがのちに倒産し、貧乏な暮らしだった。母はよくヒステリーを起こし家出しては戻った。ジョージはそんな両親を見て育ち、早く家を出たいと思っていた。青年になり家を出てカリフォルニアへ移り、友だちとマリファナの売人になった。またたくまに売りさばき、大金を手にした。しかし何度か逮捕されては釈放をくりかえすうちに、大麻からコカインを扱うようになり、仕事の規模はどんどん膨らんでいった。仲間も増えたことで裏切りも起こり、波乱ばかりだった。
犯罪者の半生を映画化するのって、まぁ納得いかないところがあるが、ジョージ・ユングの半生はおもしろかった。ことばはふさわしくないかもしれないが、大事なものをよくわかっている彼はろくでなしではない気がした。ビジネスにおいて義理人情のようなものは無視しなければならない、特にカタギではない世界でジョージはやさしすぎたのだろう。どちらかというとビジネスにおける手腕のようなものは語られていなかった気がするし、「度胸だけはあった」というに過ぎない印象だった。失ったらいけないものをわかっていたのに、周りの人間たちの欲望が裏切りを招き、地獄への一本道しかなくなっていたに違いない。もちろん自業自得ではあるが、彼らを取り巻くひとたちがマトモでなさすぎたように思う。ただでさえコカイン中毒な連中なので、マトモなわけがないのだけど、ふしぎなのはマトモで健康な状態で成功するのがいちばんの理想だと、どうしてだれひとり気づかないのか。いっときそれをジョージは感じとったようにもおもえたが負けてしまった。
父の愛と娘への愛は涙なしではみていられなくて、絶対的な味方という存在の心強さに胸を打たれた。母や妻はだいぶ偏りがあって、そのあたりも父親譲りというか、苦労の多い夫婦生活は似たところがあった。特にいまは亡き、レイ・リオッタの父親役はかなり好感で、つい先日までコカインを鼻から吸っていたのはレイ・リオッタのほうじゃないか、と笑っちゃうところなのだけど、多くを語らずただ息子を世界一愛している父親を好演していた。ほんとにジョージ・ユングの父親は息子が密輸をしていることを知って、やめろと進言しなかったかはわからないが、ただ息子を愛していたことだけはよくわかった。
ジョージ・ユングという家族を愛し愛された悲しい男の半生、見ごたえはバツグン。ただ、マフィアやカルテルの映画だけど、そっちの緊張感はさほどかんじられずヒューマンドラマのほうに重きがあるので、クライム映画としての重厚感を求めると期待ハズレになりそう。
ところで、ジョニー・デップがすきだったので公開から何年もしてからVHSを買ったのだけど、いまはもう手元になくて、そして映画の断片すら覚えてなかった。あたしの記憶は半分以上死んでいる気がする。
金髪長髪のジョニー・デップは、ときに「ギルバート・グレイプ」(1993)のようで美しい表情も垣間みえた。美しいのに汚い役がハマっていた。ペネロペ・クルスは今も美しいけれど、20代後半のこのころは美しいということばでは表せないほど。ヒステリーな狂乱妻も好演していた。ジョージの娘クリスティーナの幼いころの役は、エリック・ロバーツの娘エマ・ロバーツの初映画出演ですって!かわいい