2024.10.19

容疑者 室井慎次
「踊る大捜査線」のスピンオフ映画。
容疑者 室井慎次の映画情報
原題 | |||
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制作年 | 2005年 | 制作国 | 日本 |
上映時間 | 117分 | ジャンル | サスペンスドラマ |
映倫 | G | ||
オフィシャルWeb | https://www.fujitv.co.jp/b_hp/yogisya_muroi/index.html |
監督 | 君塚良一 |
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キャスト | 柳葉敏郎 |

以下「容疑者 室井慎次」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「容疑者 室井慎次」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
容疑者 室井慎次のあらすじ・ストーリー
2005年2月某日―。警視庁・室井慎次管理官(柳葉敏郎)が、自らが指揮をとった殺人事件の捜査の責任をとらされ、逮捕されてしまう!室井を救おうとする若き弁護士・小原久美子(田中麗奈)。そして、警察の不正を暴くという大義名分をかざして徹底的に室井を追い詰める弁護士・灰島秀樹(八嶋智人)。
そこに、警察庁と警視庁の確執が絡み、新城賢太郎(筧利夫)や沖田仁美(真矢ミキ)の尽力もむなしく、事態は最悪の状況に。室井の捜査への姿勢に心動かされた新宿北署の現場の刑事・工藤敬一(哀川翔)たちは、さらに殺人事件の真相を追う…。
さらに、今まで語られることのなかった室井の過去が明らかになった時、室井はさらなる窮地に追い込まれる。果たして、室井はシロか、クロか!?
容疑者 室井慎次をみた記録
時は経ち、なんと室井慎次の続編が公開される。ということで連日、踊る大捜査線のドラマやら映画やらでフジテレビは平成の爆発人気シリーズを放送していたわけで。
踊る大捜査線のいわばスピンオフなので、青島刑事の踊る大捜査線とは雰囲気がちがうわけだが!これはほぼファンタジーと言わざるをえない。ま、映画なんてたいがい非現実的だけど、新宿北警察署の建物や内装は大正だか昭和だかのロマンだし、外にはドラム缶まで丁寧においてある。日々チンピラを相手に仕事している、そこで働く刑事たちも昔の刑事ドラマのそれでチンピラ。こんな刑事たちに囲まれた室井警視正のギャップがよいのかもしれないが、こういうのやめようよ、と主張しておきたい。
新宿で男性が殺される事件が起きた。新宿北警察署の神村巡査が殺人容疑をかけられたが逃亡中の事故で亡くなった。被疑者死亡で書類送検されようとしているところ、室井慎次はなにかおかしいと気づいて捜査を続けようとする。と同時に神村巡査の母親が告訴したことから、東京地検が室井慎次を逮捕。室井慎次が逮捕されたことで、警視庁と警察庁の権力争いが勃発。室井慎次は、事件のことなんかどうでもいい偉い奴らの間に挟まれながら、事件の真相を追う。
犯人は誰なんだ、この女はなにを知っているのか、などの殺人事件にかかわる推理や捜査はほとんどどうでもよく。それでも捜査を続けるんだ!と正義を信じる室井慎次の意思とは裏腹に、そんなに捜査は進まず。というより、時間の経過とラッキーが重なって、勝手に解決へと導かれるあたりは、やっぱりこの映画はサスペンス要素はなくヒューマンドラマ(プラスファンタジー)という印象。そんな解決あるかよ、と感じるひとは少なくないはず。室井慎次が辞職を決意したころになって、ようやく本気を出しはじめて、続々と調べてきた報告に鼻息を荒くする新宿北警察署の面々にも腹が立つ。お前たちがちゃんと仕事していたらこうなっていなかっただろ感である!
この映画は「室井慎次」という男がテーマなわけなので、たしかにヒューマンドラマであるに違いないだろうけども、幸運が重なりすぎているというか、刑事がぜんぜん事件を解決できてないじゃないか問題につっこみたくなるわけだよ。頭がキレまくる弁護士灰島弁護士も有利な立場であるにもかかわらず感情的になってボロを出すし、頭はパーでどうしようもないクズ娘も灰島弁護士に守られて黙秘だったが、父親が自白して弁護がされないとわかったら最後はペラペラとわざわざ言わなくてもいいことを。娘をなんとか守るためにいくらでも金を出すと灰島弁護士に依頼した父親も公安に脅されたのか自白。室井慎次の行く末を阻む上層部の権力争いの横で、室井慎次を助けようとした者たちの働きによって事件は解決する。室井慎次もびっくりだ。
と、腑に落ちないことは多々あるも、以下のシーンはお気に入りだ。
- 室井慎次が検察官(佐野史郎)に聴取されているときのこと。無断でドアの隙間からヤジを飛ばしてきた灰島弁護士を追い払う検察官のドアの閉め方。めちゃめちゃかっこいい
- 仮釈放後に立ち寄った食堂で、能天気な言い方で重要なポイントに近づく推理をめぐらせる小原弁護士(田中麗奈)と、頼りない小娘にだんだん心を開いてきた室井慎次が会話するBGM
- 仮釈放後、警察手帳を取り上げられて停職処分になった室井慎次が向かった新宿北警察署で、定職中でも捜査しようとするんじゃないかと待ち受けていたカンのいい坂村警視長(升毅)
- 人間は神から勇気をひとつだけ与えられている。勇気は捨てたら取り戻せない。室井慎次はそれを知っているから必死に闘っている。小原弁護士に、弁護をやめたって構わないが勇気は捨てたらもう二度と戻ってこないぞと説く津田弁護士の「室井さんの勇気の火が消えそうだ」
- 室井慎次が管理官のころから、よくもわるくも、しょっちゅう横でムカつく顔してるよな、の新城補佐官(正確には、警察庁長官官房審議補佐官(刑事局担当) 警視正のようです)の「激務ですが、お受けいただけますか」の声量
- 辞表を受けとられず、広島県警察本部刑事部への異動となった室井慎次。警察本部ということは、踊る大捜査線ドラマでずっと扱われたテーマ、本店と支店の対立の「本店」へいくわけだ。なんの役職かはわからないけど、警視正がいくわけだから刑事部のそれなりの役職になるのではないかとおもうが、本店の皆さん、激務してたっけ。激務してたのは所轄の皆さんだったような。
総じて、踊る大捜査線はだいすきなので、こうやってチャチャ入れながらみるのが余暇なのです。
あでも、哀川翔の演じる工藤刑事はなにいってるか聞きとれないことが多いし、チンピラ刑事にも無理があるし、室井慎次との関係がはたして必要だったのかとさえおもう。室井慎次が歌舞伎町で実際に捜査をするわけじゃないから、いわゆる現場の人間が必要で、室井慎次を信頼する現場の人間代表が彼の役割だろうけど、あんなひといるのおかしいって。最後なんか、降雪をバックにセンチメンタルな表情しちゃってさ。あんちゃん、と呼ぶのもゾクゾクッとしちゃったわよ。あんちゃんと呼ぶたびに、殿が浮かんじゃうし
哀川翔はキャラクターが作りやすく、情熱を持って仕事していそうだし、なにより人柄がよさそうだから制作側からも視聴者からも人気が高そうだ。
ついでにいうと、田中麗奈演じる小原弁護士の存在は、あのころの青島刑事やすみれさんを思わせるような、いやでもぜんぜん違うな、と頭のなかで10秒くらい考えてしまう、そう踊る大捜査線を振り返る時間をくれた。彼女が室井慎次を弁護するかやめるべきか、の葛藤をどうクリアしたかはよくわからなかったが、室井慎次に喝を入れ、消えそうな火に薪をくべるフレッシュな人間というよい役割を好演していた。陸上部出身も、昔の恋人とリンクさせて室井慎次に刺激させるクールな設定させちゃって。小原弁護士は陸上部ぽくてかっこいい&かわいいが合わさっていた。