2017.5.4
ルーム
原作は、フリッツル事件をもとにしたエマ・ドナヒューの小説「部屋」。フリッツル事件とは、24年に渡って父親に監禁されたエリーザベト・フリッツルの実娘監禁事件。
監督は、「FRANK -フランク-」(2014)のレニー・アブラハムソン。
第88回アカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚色賞にノミネートされ、ブリー・ラーソンが主演女優賞を受賞。ほか多数の映画賞を受賞。
ルームの映画情報
原題 | ROOM | ||
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制作年 | 2015年 | 制作国 | アイルランド、カナダ |
上映時間 | 118分 | ジャンル | サスペンスドラマ |
映倫 | G | ||
オフィシャルWeb | http://gaga.ne.jp/room/ |
監督 | レニー・アブラハムソン |
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キャスト | ブリー・ラーソン |
以下「ルーム」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「ルーム」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
ルームのあらすじ・ストーリー
ママ(ブリー・ラーソン)とジャック(ジェイコブ・トレンブレイ)が二人で暮らす狭い部屋に、今日も新しい朝が来た。ジャックは、電気スタンドや洗面台、トイレにまで「おはよう」と挨拶し、「僕、5歳だよ」と宣言する。今日はジャックの誕生日、ママがケーキを焼いてくれると聞いて、喜ぶジャック。歯磨き、ストレッチ、壁から壁への駆けっこ─ジャックは毎朝のルーティンを、ゲームのように楽しそうにこなす。けれど、出来上がったケーキに火のついたロウソクがないのを見たジャックは、すねて怒り出す。ママはそんなジャックを抱きしめるしかない。そう、この部屋にはロウソクだけでなく、いろんな物がない。窓さえも天窓が一つあるだけだ。
夜になると、ジャックは洋服ダンスの中で眠る。時々夜中にオールド・ニックと呼ぶ男が訪ねてきて、服や食料を置いて行くのだが、ジャックはママの言いつけ通り洋服ダンスから出ない。ママはオールド・ニックに、「ジャックにもっと栄養を」と抗議するが、半年前から失業して金がないと逆上される。さらに、真夜中にジャックがタンスから出てきたことから、ママとオールド・ニックの間に争いが起きる。 翌朝、部屋の電気が切られ、寒さに震えるなか、ママは心を決める。生まれてから1歩も外へ出たことがなく、この部屋が全世界だと信じているジャックに、真実を話すのだ。ママの名前はジョイ、この納屋に閉じ込められて7年、外には本物の広い世界があると聞いて、にわかには信じられず、大混乱に陥るジャック。
電気が回復した部屋で、一人じっと考えを巡らせるジャック。起きてきたママにジャックは、TVを見ながら「カメは本物?これは?」と次々と質問を浴びせ、オールド・ニックをやっつけようと持ち掛ける。だが、閉ざされたドアのカギの暗証番号は彼しか知らない。 外の世界に興味を持ち始めたジャックに勇気を得たママは、ジャックに読み聞かせていた「モンテ・クリスト伯」からヒントを得て、死んだフリをして運び出される計画を立てる。ジャックをカーペットにくるんで、何度も段取りを練習させるママ。ジャックは恐怖からかんしゃくを起こすが、ママからきっと“ハンモックのある家と、ばあばとじいじがいる世界”を気に入ると励まされる。「ママは?」と訊ねられたママは、2度と息子に会えないかもしれないと知って、言葉に詰まる。その時、オールド・ニックの足音が響く─。
失敗に終わりかけた脱出劇が、ジャックの記憶力と出会った人たちの機転で、思わぬ結末に辿り着く。翌朝、病院で目覚めるママとジャック。初めて外の世界へと投げ出されたジャックは、見る物全てに対して驚きと戸惑いでいっぱいだ。ママの両親(ウィリアム・H・メイシー、ジョアン・アレン)が駆けつけるが、二人が離婚したことを知ってショックを受けるママ。 何日間か入院した後、ママとジャックはばあばが新しいパートナーであるレオ(トム・マッカムス)と暮らす家へと帰る。ママは奪われた人生を取り戻すはずだったが、現実の世界は決して楽園ではなかった。予想もつかない出来事が、次から次へとママに襲いかかる。一方、新しい世界での冒険を楽しみ始めたジャックは、傷つき疲れ果てたママのために、あることを決意する─。
ルームをみた記録
監禁されたルームから抜け出すまでのストーリーかと思っていたら違うものだった。監禁されていたシーンは三分の一程度で、それからがこの映画の大事なところだった。
当事者にしか到底分かり得ないことばかりなのだけど、当事者にとって一生背負っていく大きな傷で、人生というものに大きな大きな大きな爪痕をつけられるというのはどんな心情なのか。当然ながら共感できるところはひとつもなく、ただただ壮絶な神経崩壊の状況を応援するしかないのだけど、共感よりもリアリティを追求していたようで、そのおかげか映画のタッチがドキュメンタリーかと錯覚するようなテイストでもあった。
そして、共感できないなりに、この親子のこれからの人生がしあわせであるよう願う映画になっていた。
監禁事件だけではなく、どんな事件も被害者は事件解決したといってきれいに落着するわけではない。経験しなくてよかったことを経験してしまった、そのトラウマや、取り戻せない時間や、もう戻れない昔のじぶんや、汚れを感じることや、劣等感に苦しんだり悔しがったりすることが長く続くのだ。
とても見ごたえのある映画で、小さな少年から勇気をもらえる。