2023.8.12
キングダム2 遥かなる大地へ
原作は原泰久のマンガ「キングダム」。「キングダム」(2019)の続編。
キングダム2 遥かなる大地への映画情報
原題 | |||
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制作年 | 2019年 | 制作国 | 日本 |
上映時間 | 134分 | ジャンル | 時代劇 |
映倫 | G | ||
オフィシャルWeb | https://kingdom-the-movie.jp/series2/ |
監督 | 佐藤信介 |
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キャスト | 山﨑賢人 |
以下「キングダム2 遥かなる大地へ」の感想・評価・レビューの内容は、ネタバレを含む場合があります。
「キングダム2 遥かなる大地へ」をまだご覧になられていない方は、十分にご注意ください。
キングダム2 遥かなる大地へのあらすじ・ストーリー
時は紀元前。春秋戦国時代、中華・西方の国「秦」。戦災孤児として育った信(山﨑賢人)は、王弟のクーデターにより玉座を追われた若き王・嬴政(吉沢亮)に出会う。天下の大将軍になると一緒に誓いながらも死別した幼馴染の漂とうり二つの国王に力を貸し、河了貂(橋本環奈)や山の王・楊端和(長澤まさみ)と共に王宮内部に侵入する。信は立ちはだかる強敵を打ち破り、みごと内乱を鎮圧。玉座を奪還することに成功した。しかし、これは途方もなき戦いの始まりに過ぎなかった――
半年後、王宮に突如知らせが届く。隣国「魏」が国境を越え侵攻を開始した。秦国は国王嬴政の号令の下、魏討伐のため決戦の地・蛇甘平原(だかんへいげん)に軍を起こす。歩兵として戦に向かうことになった信は、その道中、同郷の尾平(岡山天音)と尾到(三浦貴大)と再会。戦績もない信は、尾兄弟に加え、残り者の頼りない伍長・澤圭(濱津隆之)と、子どものような風貌に哀しい目をした羌瘣(清野菜名)と名乗る人物と最弱の伍(五人組)を組むことになってしまう。魏の総大将は、かつての秦の六大将軍に並ぶと噂される軍略に優れた戦の天才・呉慶(小澤征悦)将軍。かたや秦の総大将は戦と酒に明け暮れる猪突猛進の豪将・麃公(豊川悦司)将軍。信たちが戦場に着く頃には、有利とされる丘を魏軍に占拠され、すでに半数以上の歩兵が戦死している隊もあるなど戦況は最悪。完全に後れを取った秦軍だったが、信が配属された隊を指揮する縛虎申(渋川清彦)は、無謀ともいえる突撃命令を下す――
キングダム2 遥かなる大地へをみた記録
王宮内の内乱をおさめた数ヶ月後、秦は魏軍が進軍してきている一報を受ける。侵攻してくる魏軍を討伐するために、秦は麃公を将軍として蛇甘平原へと向かった。元下僕の信も駆り出され、歩兵として初陣を迎えた。蛇甘平原ではじまった戦は、魏の総大将呉慶の知略型と秦の総大将麃公の本能型の戦略がぶつかり合い、秦が圧倒される序盤となった。しかし窮地に追い込まれたところで信たちの機転が功を奏し、戦況が一変していく――。
公開からどのくらい経ったか、むしろつい先日キングダムⅢが公開されていて、完全に周回遅れのタイミングだ。しかし原作はよく覚えているので、ここはこう改めたんだな、と原作と映画の比較をしつつ、今後にどう繋げていこうか試行錯誤している制作の意図が感じられた。
信にとってはじめての戦ということで、そのデビューはこれから世界を変えていこうとしている少年にとって申し分ない経験となったわけだけども、映画としての盛り上がりはどこがクライマックスだったのかつかめなかった。これからもさらに続いていくことを考えると、残念ながらつなぎに過ぎず、今後の主力メンバーの紹介感が強い。戦の激しさ、血の生臭さよりは、戦というもの、戦には戦略を制する必要があること、知略と本能と将軍のタイプによって大きく変わること、歩兵や騎兵など役割があることなどなど、これからのキングダムという戦ばっかりが続いていく最初のチュートリアルのようだった。
主人公である信が盛り上がったのは、まだ絆もなにもない仲間たちと難を乗り越えたところと、麃公将軍を追いかけて戦車を破壊したところだろうか。前作が最高のスタートを切って、次作の今回は駆け足で、かつ今後をいかに盛り上げていくかの重要な橋渡しという役割だろうからこんなものだろう、という印象だった。とうぜん今後のために必要なことなので、これがよい展開だとおもうが、原作を知らないひとにとっては物足りなそうな気がする。
今後の展開を見据えた、いわば「キングダムをたのしむための戦とメンバー紹介」が見どころだということで、その意味ではとっても満足している。あまり邦画をみているわけではないのであつかましいかもしれないが、今回も(というか今後を考えると特に)配役が適切すぎて。マンガの世界からそのまま出したかのようなピッタリ具合にドキドキとワクワクが止まらなかった。ほかの映画やドラマではみていられない、寒そうなところも、的を射すぎているキャスティングのおかげで世界観が保たれていた。マンガを現実世界で具現化しようとするひとたちは、さぞたのしいだろう!このキャラクターはこの役者がいいんじゃない?と意見が飛び交う会議が想像できる。
最後に、麃公を演じたドラマ「愛してると言ってくれ」くらいしかみたことがないトヨエツ。麃公はもっとおじいちゃんであるとマンガでは思っていたけど、(マンガでは多くのキャラクターが顔と年齢が不釣り合いなのでどうでもいいけど!)トヨエツもぴったりハマっていて制作の決議は正しかったことがよくわかったのだけど、口をひらいたときだけは重厚感を失っていた。酒が好きなわりに焼けていない声、重そうなのに軽く高い声がひっかかるのかとおもったが、おそらくちがう。トヨエツの芝居がいまいちしっくりきていないようだった。どうも棒読み感があるのはなんだったのだろう。いい役なだけにすこし残念だった。あのトヨエツがキャラクターをモノにしていない感を残し、キングダムⅡは幕を閉じた。
最後に、ちょっと主題歌はしっぽりしすぎたのではないか。エンディングに流れたそれは、感動させたくてしかたない印象を受けて寒さを感じた。さらにいうとキングダムという本来の下剋上や支配のためにたくさんの血が流れる生々しいストーリーに一切合っておらず、人間ドラマだけにフィーチャーされているようにおもった。前作の主題歌も血生臭さはあたりまえになくても、マーケティングの効果でイメージを定着させていた。今回はいまおもい出そうとしてもサビすら浮かび出てこないほど印象が激薄です。